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地域の未来につなげたい
地元企業を救う一手。

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地域産業を守り、ときに育て、一緒に未来を描く。そのためのソリューションを提供する青森みちのく銀行では、一歩踏み込んだサポートで地域の発展を目指す。銀行員のノウハウを起爆剤とした地元企業の経営改善もその一つだ。海のまち、八戸市の造船会社で、これまでの知見を活用し、ミッション達成に向け奮闘する銀行員を追った。

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1,500人の雇用と
地域経済を守るために

日本の造船業は瀬戸内地方に集中しているが、八戸市にも東日本で唯一の造船所「北日本造船」がある。夏は涼しく冬は雪が少ない気候が、屋外作業の多い造船環境に適しているという。同社の主力製品は、鉄鉱石や石炭、穀物などを積むバルクキャリアと石油精製品を運ぶケミカルタンカー。「世界でもここでしか製造していない」というフルーツ運搬用の冷凍運搬船など、ニッチなプロダクトもある。中心となる船は全長約180mだが、大きいものでは全長約200m、幅約30mにも及び、世界中の物流業界で活躍中だ。ここでは協力会社を含む1500人がものづくりに勤しむ。「近隣には北日本造船の仕事のみを行う会社も多く、地域経済に対する影響力は大きい。この会社がくしゃみをすると、それなりのインパクトは避けられません」。小笠原は、同社の存在価値をこう語る。
朝の体操を終えると、現場を回り進捗の確認を行うのが小笠原の日課だ。2023年7月に赴任した彼は、初めて造船所を訪れた。「北日本造船という会社は当然認識していましたが、これほどまでに大きな船を造っていることは知りませんでした。」
特殊な業種に驚いたが、「財務やガバナンスはどの会社も大きく変わらない。これまでの経験をもとに結果を出すだけだ」と静かに意気込んだ。

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長く続いた慣例を廃止
大きな利益につなげる施策

約1年かけて建造される外航船は、1隻の販売価格が50億円。本社工場では2つのドックが稼働し、豊洲工場にも最終仕上げを行う船が常に停まっている。業績は好調に見えるが、実は芳しくない状況が長く続いており、新型コロナウイルスの影響による受注減や物価上昇、円安も重なって業務改善が急務だった。財務を分析した小笠原が徹底的に取り組んだのがコスト管理。「安全面を重視しつつ、いかに安く造り利益を上げるかが重要。当時のコスト管理の仕組みは甘く、収支構造と財務内容を分析する必要性を感じました。特に気になったのが残業にかかるコストです。本当に必要か、問題提起をしました」。
赴任した当時、同社では1時間の早朝残業が当たり前になっており、毎日800~900人の残業代が経営を圧迫していた。社内ではすっかり慣例化していた早朝残業だが、小笠原はメリハリのある働き方ができていないと感じ、こう提案したという「無駄な残業は生産性の向上につながらない。それなら朝の残業をやめましょう」。長年のルーティンを銀行員に指摘されたことで、反発の声も上がったが、部署ごとに残業時間のモニタリング調査を行い、従業員を説得した上で廃止を決定。早朝残業があった当時は、夜家族が起きている時間に就寝し、朝家族が起きる前に出社するという生活をしていた従業員も多かったが、残業をなくしたことで家族との時間が増えたと聞き、その話が反対する従業員の心を動かした。銀行員が従業員の生活を変える、まさに銀行員の枠を超えた挑戦だったのである。
また、同時に一日単位で作業計画を立て、短期の目標達成に向けて働く出来高管理の仕組みを導入。その結果、生産速度を保ちつつ、残業や休日出勤にかかるコストの削減と収益の向上が実現した。

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世界を相手に躍進
ここにはもっと伸びしろがある

「我々の発想にない提案で、長年の悪い慣例を変えてくれた小笠原さんは、企業が目覚めるカンフル剤です。確実な目線で正しいことを言う、これに勝るものありません。熱意を感じさせつつ、社内に副作用が起きない温度感で改革してくれた。憎まれ役になっていただいた部分もあります」と根城信吾社長。その言葉に対し、小笠原は「嫌われても構わないという思いで、必要なことははっきりと伝えました。幸いそれほど嫌われていないと思います」と笑う。
現在、小笠原の主導でさらなる改革が進行中だ。それが、労務コスト管理の見える化。作業に必要な時間と人員の配置を数値化し、1ヶ月ごとに計画を立て振り返ることを習慣づけた。提案した当時は「そんな暇はない」と現場から不満の声もあったが「暇がないのは時間の管理ができていないから。問題なくできるはずだ」と、改革に必要なことは率直に伝えた。一見するとストレートすぎる言葉だが、「小笠原さんの存在自体が刺激になり、話には説得力があって、従業員のマインドの改善にもつながりました。今は従業員みんなが同じ方向を見ている実感があります」と根城社長も賛辞を惜しまない。
また、社員が改善に対する取り組みと成果を発表する業務改善推進委員会を実施。頑張っている人を社員の前で褒めることで、社内の士気を高めている。この場面では、部下のモチベーションを高め、店舗の一体感をつくる支店長時代の経験が生きた。
同社では、2024年度の年商が400億円を超える見込みだ。高度な技術や知識を要するため、優秀な人材の受け入れ先としても貴重である。「製造業の現場に入り、ものづくりのすごさを目の当たりにして、これほどの技術を持ち、世界を相手にした会社が青森県内にあるのかと誇りに思いました。今取り組んでいる労務コストの見える化が確立すれば、もっと収益は上がるでしょう。私の役目は、会社が自走し、自己成長の仕組みを確立するサポートをすること。“八戸から世界へ” 会社の将来が楽しみです」。建造中の船に目をやり、期待を込めてこう語った。

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北日本造船株式会社
経営管理室 室長
小笠原 弘幸 Ogasawara Hiroyuki
1996年入行
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北日本造船株式会社
代表取締役
根城 信吾 様 Nejo Shingo
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